今回の作品について制作なりに感じたことを書きます。
解離性同一性障害という、一般には多重人格として認識されてるこの病気。
ドラマなどでは容易に受け入れられてますが現実には受け入れて貰えていない事がほとんどです。
この病気と向き合ってる人からすると「どうして認めて貰えないのか、信じて貰えないのか」と思われるでしょうが、でもそれが普通です。
だって病名が認識されてない。私も正式病名は今回初めて知 りました。
過去、私の周りに精神科に通ってたコが2人いました。KさんとIさん。
同じ職場だったのですが、Kさんはリストカットを繰り返していて、食生活も異性関係もめちゃくちゃ。神経質になり胃潰瘍による出血により何度も貧血を起こして倒れ、夜は眠剤とお酒を飲み自分が眠りに着けるまで私に電話をかけて来る。私はだんだん電話を取らなくなり避けるようになりました。
心身共にボロボロになったKさんは最後は自分で見切りをつけて職場を辞めて行きました。
Iさんは後輩のコで、私生活で色々悩みが あったようでした。まず頻繁に遅刻をするようになり、理由を聞いたら電車に乗れないという。無理に乗ると駅で倒れる。
ある日職場でIさんが何か言いたげな風に涙目で私を呼びだしました。どうしたの?と聞くと急にその場に泣き崩れ過呼吸になりパニックを起こしました。職場が病院だったので看護師さんが処置してくれましたが、「ああいった精神的に不安定な人が職場にいると困る」という理由でその子は異動になりました。
KさんIさん共に私は仲良くしていましたが、私はどちらに何もしてあげられず見捨てたのです。
私は ひどい人なのでしょうか。
当時の私は連日18時間労働という過酷な環境で仕事をしていて心身共にボロボロ。チーフとして勤務してた為、人手不足をフォローし他の従業員の事も考えなくてはならない。そんな状態でどうして彼女達を受け入れる事ができたでしょう。
Kさんが辞めると知った時ほっとしました。もう電話はかかって来ないんだと。
Iさんの異動が決まった時、可哀相と思いましたが肩の荷が下りてほっとした方が大きかった。
二人が辞めて、煩わしい事が二つも減った。うれしい。
それが私 の本音
中途半端に同情して受け入れるふりをして共倒れになるのはお互いに良くない事だと思いす。受け入れるならとことん、共倒れになる覚悟がなければ支えてあげれません。互いに覚悟が必要なんです。
私にはその覚悟が全くありませんでした。
いきなり友達が精神不安定になり、その友達の行動に振り回され続け自分の力に限界を感じたらやっぱり逃げてしまうと思うんですよ。どうしていいかわからないし、自分が一番大事だし、病気なら医者に任せるのが一番だと思ってるから。
でもそうでなく周りにき ちんと理解してもらい支えてもらい共に生きて行きたい。
この劇中に登場する精神科に通う者を取り巻く人達、それは私達なのです。
精神病を患った役の役者には、自分はちゃんとしたいと思っているのに空回りして何もできず、その思いが周りに理解されないその辛さ、支えて欲しい人が離れて行く悲しさ・寂しさを、取り巻く人達を演じる役者には、もし自分があの立場なら何が出来るのか、自分がとった行動は間違いか正しかったのか、自分にはその覚悟があるのか、人としてどうなのかを舞台を通じてお客様に伝えて欲しい。
そしてお客様には自分自身と重ねあわせて観て頂けたらと思います。
重ね合せて観る事により私達が伝えたいものが明確に伝わるのではと思います。
私自身も、あの時何も出来ず逃げ出した自分を重ねながらこの作品を見つめています。自分を責めるのでは無く、なぜあの時私はそうしたのか、今度そうなった時に薄っぺらな同情心に流されず自分の本音で向き合うにはどうしたらいいのか。
本番まで三週間を切りました。
伝えたい、感じ取って欲しい、受け入れて理解して欲しい。
そんな作品に仕上が るのを楽しみにして待っています。